Ballistaは新たな事業として、自衛隊出身者を対象としたキャリア形成支援サービス「Catapult」を8月からスタートしました。自衛隊出身者は民間企業でも活躍できるスキルを身に付けているにもかかわらず、能力を存分に発揮できていないケースが少なくありません。防衛大出身で日本や米国を代表する企業で重要なポストを任された経歴を持ち、現在は合同会社オープンゲートを経営する中山雄介さんに自衛隊出身者が民間企業で成功する秘訣を伺いました。
元自衛隊員プロフィール
中山雄介 防衛大学校卒業後、セブンイレブン・ジャパンに入社。その後、富士通や日本コカ・コーラ、Amazonジャパンや楽天へ転職。現在はEC分野で十数社の社外顧問を務めながら、越境ECのコンサルティングを行う「合同会社オープンゲート」や福岡県で酒蔵を立ち上げるスタートアップ「株式会社SakeTreasures」を経営している。
古川勇気 2024年7月にBallista入社。8月からスタートした自衛隊出身者のネクストキャリアをサポートする事業「Catapult(カタパルト)」を担当。防衛大学校卒業後、入社試験時の適性検査を販売する企業で営業職などを経験。人材獲得や入社後のミスマッチに課題のある会社の内定率向上や離職率低下に貢献した。
防衛大で習得 同世代に負けない強みと民間企業で活躍する原動力
古川:まず、中山さんが防衛大に入校した理由を教えてください。
中山:いくつか理由があります。私は福岡県にある公立高校に通っていましたが、目立つ存在ではなく、不完全燃焼な高校生活でした。体育祭や文化祭といった学校行事で輝く人、部活で活躍する人、勉強を頑張って地元の国立大学に進学する人がいる中で、自分は既定路線ではない道に進んだ方が良いかなと感じていました。それから、自宅が裕福ではなかったので、給料を受け取りながら人と違う道を歩める防衛大に魅力を感じました。厳しい環境で知識、(仁義礼智などの)徳目、体力を身に付け、一般的な大学に進んだ学生に勝ちたい思いがありましたね。また、国を守る仕事や日本の歴史に関心があったのも大きかったです。小説「坂の上の雲」の秋山兄弟に憧れていました。
古川:私も共感できるところが多いです。衣食住が整っている上に給料も支給される防衛大は恵まれた環境ですし、大学生の期間に人間力も鍛えられますよね。卒業後、中山さんは世界的な企業に勤めたり、現在は自らの会社を経営したりしていますが、民間企業で働く際、防衛大での学びがどのようなところに生きましたか?
中山:サラリーマンとしても、起業して会社の経営者となってからも、私は防衛大出身の転職者を採用しています。民間企業で必要になる基礎力が非常に高いので入社試験を通過し易いですし、入社後も成功しているケースが多いです。例えば、民間企業の課長クラスが直面するリーダーシップやマネジメントなどの悩みは、防衛大で多くの人が経験して解決方法を学んでいます。
それから、防衛大や自衛隊出身者は、やり切る力や負けん気を自然と身に付けています。一般的な大学生と違い、防衛大の学生は上下関係が厳しいうえに、住まいは基本的に全寮制です。勉強の他に訓練もあります。留年するわけにはいかないので、何事にも全力投球です。また、私自身は大学のキャンパスライフを楽しんできた同世代には絶対に負けたくないという気持ちを今でも持っていて、それが人生を切り拓く原動力になっています。防衛大卒業のキャリアを背負って仕事しているプライドもあるので、「さすが防衛大出身だね」と言われるくらい民間企業で活躍したいと考えていました。
「言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」 ビジネスの場でも生きた山本五十六氏の言葉
古川:中山さんはセブンイレブン・ジャパンで民間企業のキャリアをスタートしました。就職には苦労しましたか?
中山:当時は第一次就職氷河期だったこともあって、履歴書を20社くらいに送りました。自分に合わなさそうな業種を外し、先進的に市場をつくっている業界にしぼりました。条件に合った業界の1つがコンビニエンスストアで、仮説と検証で売上を伸ばす経営手法にも惹かれ、セブンイレブン・ジャパンに入りました。
例えば、セブンイレブンではおにぎりが1日に5個売れた時、その売れ方を分析します。複数の人が購入して瞬時に売り切れたのか、賞味期限ギリギリのタイミングで1人がまとめて買ったのかによって意味合いが変わるからです。売場の棚やお客さんの動きを観察し、翌日や翌週はどの商品がどれくらい売れるのか予測して発注します。店内で想像できない場合は近所を歩いて、学校行事やイベントの予定があるのか、工事が行われているのかなど情報を集めます。仮説を立てて発注することで売上や利益を伸ばし、達成感がありましたね。
古川:防衛大時代の経験を活用できた部分はありましたか?
中山:防衛大で山本五十六さんの「言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」という言葉を学びますが、ビジネスの場でもすごく活きましたね。セブンイレブンでは最初に店長を経験して、その後はオーナーの教育や商品開発などを担当しました。売上を伸ばすには、従業員のモチベーションを高めることが重要です。例えば、女子高生のアルバイトにはスイーツやお菓子コーナーを担当してもらいました。売れ残ったら私が責任を取りますが、商品の発注や売場のレイアウトは任せるわけです。すると、責任感や向上心を持って働くようになります。上手くいった時に褒めると、一層やりがいを大きくします。どの業種にも共通しますが、仕事で大切なのは「いかに人を動かすか」です。防衛大での学びが民間企業でも活用できたのでうれしかったです。
日本を代表する企業から世界的企業へ 転職でキャリアアップ
古川:防衛大での学びと民間企業の業務に共通点があったわけですね。一方で、ギャップはありませんでしたか?
中山:接する人たちのタイプが全く違いました。防衛大は目指す方向が同じ人たちばかりですが、コンビニは勤務時間によって主婦、高校生、大学生、フリーターなど年齢や価値観が違う人をマネジメントしなければいけません。また、それぞれの業務が必要な理由を説明することから始まるので、質問には真摯に答えないと、すぐに人が離れてしまうところもギャップが大きかったですね。
古川:防衛大のマネジメントは規律がしっかりしていますし、役割を果たすのが当たり前なので民間企業との違いはありますよね。中山さんはセブンイレブン・ジャパンから富士通、さらにAmazonやコカ・コーラへと移られました。どのような理由で転職されたのですか?
中山:セブンイレブン・ジャパンで主要な仕事を経験して結果も残すことができました。当時はIT化が一気に進んでいたので、将来を見据えてITやSEの知識が必要だと考えていました。3年ほど働いたタイミングで、セブンイレブン時代の先輩で富士通に転職した人に誘われて富士通へ入りました。業種は違いましたが、セブンイレブンで身に付けたシステムやマーケティングの知識が活きましたね。
その後、メーカーの仕事を知りたいと考えて、ホームページの応募フォームからエントリーしてコカ・コーラに転職しました。富士通では米国に駐在していて、米国の大手企業がどのように意思決定をしているのか興味を持っていました。飲料の販売先をどのように選定すれば売上や利益が最大になるのか、発注する側に立つと社会の仕組みがよく分かりました。当時、米国ではAmazonで飲料を注文するのが一般的で、日本にも同じ流れが来るのは一目瞭然でした。転職のエージェントを通じてAmazonから誘いを受けたので、次の転職先に決めました。Amazonでは飲料のバイヤーから叩き上げで事業責任者まで務めました。
「日本に貢献したい」 成功して立ち返った防衛大時代の原点
古川:Amazonで特に大きかった学びはありますか?
中山:日本の企業とは違い、同調圧力に負けて声を上げられずに受け入れる人は全く評価されませんでした。会議では誰ににらまれても、自分の信念や意見を主張します。そして、方針が決定したら、それまでに反対していたとしてもコミットします。物事を決めるまでは、あらゆる方向から意見を出し、決定したら全員で同じ方向へ全力で進む。このバランスは意思決定する上で非常に重要だと学びました。
古川:Amazonの次は楽天に転職されましたよね。楽天を選んだ理由を教えてください。
中山:これは防衛大生としての情熱と重なる部分があります。どうやって日本を良くするのかという思いです。当然ですが、米国企業に所属して日本でどれだけ頑張って働いても、稼いだお金は米国へ流れます。日本の社会を見渡した時、キャッシュレス決済もSNSも、ほとんどのサービスは米国企業が提供するものです。自分の収入や地位を高める仕事は終わりにして、もっと日本の経済を豊かにする役割を果たしたいと考えました。そこで、Amazonと同じeコマースですが、純日本企業で海外に進出しようとしている楽天への転職を決めました。
私は地方の一次産業が活性化し、日本の文化が守られることを一番の理想としています。そのためには、人口減少や少子高齢化が深刻な日本のマーケットだけを見ていても、日本は豊かになりません。グローバル経済では中国の存在が欠かせないので、楽天でも自分で立ち上げた会社でも、中国をはじめとするアジアをターゲットにしたeコマースを展開しています。サラリーマンとして行き着くところまで行って、防衛大生時代に戻っている感覚です。自分がどうやって日本の社会に貢献するのか、きれいにパズルがはまり出しています。
自分に合った仕事の探し方 副業がヒントに
古川:中山さんは民間企業で成功されていますが、防衛大や自衛隊出身者の中には、民間企業で力を発揮できていない人もいます。適性に合った仕事を見つけるためのアドバイスはありますか?
中山:私も民間に出たばかりの頃は、自分が通用するのか不安でいっぱいでした。ただ、防衛大で身に付けたコミュニケーションやマネジメントの力は、民間でも武器になると自信を持ちました。自分に合った業界や職種さえ見つけられれば、必ず成功できます。転職への意思があっても一歩を踏み出せない人には、副業ができる軸足の置き方を勧めています。知り合いなどを通じて、まず副業をやってみると、自分の適性が見えてくると思います。
今は転職しやすい時代です。私みたいに副業で複数の仕事をしている人や、プロジェクトベースで集まって、終わったら解散する働き方をする人も増えています。私は「どんな仕事をしていますか?」と聞かれた時に、一言で説明できない状況が一番幸せだと思っています。ひと昔前のように、転職したら辛抱強さがないと判断される時代ではありません。ヘッドハンターは転職歴がない人は適応性がないと判断して評価しません。市場と向き合って自分の得意なところを活かしてキャリアを築いてほしいと思っています。
古川:1つの肩書きで仕事をするよりも、様々な業務を経験しながら転職先を見つけるのは良さそうですね。最後に、転職を考えている自衛官出身者にメッセージをお願いします。
中山:自衛官は国を守り、災害発生時には被災地の復旧を支援し、日本になくてはならない存在です。自衛隊が弱くなることは避けなければいけません。一方、防衛大を卒業しても、民間でこそ輝ける人がいるのも事実です。民間で活躍する人がいることで防衛大や自衛隊出身者が評価され、自衛官を目指す人が増える可能性があります。物事は循環しているので、民間企業が強くなれば税収が増えて、巡り巡って自衛官の福利厚生につながるかもしれません。自衛隊出身者の人には自衛官の知識や経験を活かせる民間企業をぜひ見つけてほしいと思っています。
古川:私も自衛官を尊敬していますし、自衛隊に感謝しています。自衛隊出身者の皆さんが適材適所で活躍できる仕組みをしっかりと創っていきたいと思います。
最後に
防衛大で培われた人間力が、民間企業での成功の礎となった中山さんの経験から、重要な学びを得られます。新しい環境においても揺るがない信念や努力が、キャリアの中で道を切り開く力となるのです。また、真摯なマネジメントや多様な人材との協働を通じて、柔軟性や人を動かす力、そして、「やり切る力」や「負けん気」が、困難な状況での自信と成長に繋がることが理解できました。
キャリアの転換点や新しい挑戦の中で活かせるヒントを得たい方は、ぜひCatapultのキャリアパートナーと面談してみてください。あなたの経験や強みを最大限に活かす道を一緒に見つけていきましょう。
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