折れない心とリーダーシップ 自衛隊の成功体験を民間企業でもアピール 

憧れのカリスマ経営者と一緒に仕事をするチャンスを手にした元海上自衛隊の佐藤禎之さんは、リトルミスマッチ日本販売代理店の社長を任されました。ところが、商品の輸入元が倒産し、事業の継続が困難になりました。全2回の後編では、佐藤さんが窮地を脱した経緯や民間企業で活きた自衛隊の経験を掘り下げます。【全2回の後編】 

目次

【プロフィール】 

佐藤禎之:高校卒業後に海上自衛隊に入隊。艦載部隊や救難飛行隊でヘリコプターのパイロットとして活躍し、30歳で退職。アメリカの靴下ブランド「リトルミスマッチ」の日本販売代理店社長を経て、「オイシックス・ラ・大地」に就職。現在は出向先の「とくし丸」で働きながら、化粧品を販売する「シールズ」を経営。 

古川勇気:2024年7月にBallista入社。8月からスタートした「Catapult」を担当。防衛大卒業後、入社試験時の適性検査を販売する企業で営業職などを経験。人材獲得や入社後のミスマッチに課題のある会社の内定率向上や離職率低下に貢献した。 

縁に恵まれて転職先決定 経営学ぶチャンス到来 

古川:リトルミスマッチの代理店業務ができなくなって、佐藤さんはどうされたのでしょうか? 

佐藤:松田さんを通じて仲良くなった食材宅配サービス「オイシックス」の高島宏平さんから、「サラダの事業を強化するために催事をやっていきたいので、力になってもらえないか?」と声をかけていただきました。催事は靴下の販売でノウハウがあったので、オイシックスの事業を請け負って会社の借金を返していきました。サラダ事業を3年くらい続けたタイミングで、今度は「佐藤さんににピッタリな会社を買ったから、やってみないか?」と高島さんに勧めていただいたのが、今も籍を置いている「とくし丸」です。とくし丸は高齢者向けの移動スーパーで、高島さんからは「自衛隊で人命救助をしてきたよな。これからは高齢者の生活を助けてほしい」と言われました。 

古川:とくし丸で働きながら、現在は自ら会社も経営されていらっしゃいますよね? 

佐藤:とくし丸に転職した理由の1つは、経営を学ぶことでした。オイシックスはファクトをベースにしてロジカルに経営戦略を練っている企業なので、感覚だけで経営していた私とは大きく違います。私が自衛隊を辞めた理由は経営者になるためです。ここで経営を学んで、起業につなげるつもりでした。その考えは高島さんにも伝えていて、2023年に化粧品を販売する「株式会社シールズ」を創業しました。社名はアメリカ海軍の特殊部隊「ネイビー・シールズ」から付けました。販売する商品は「世界最強の美容液」をうたっています。 

自衛隊で培った 好奇心とチャレンジ精神 

古川:佐藤さんのこれまでの歩みを伺っていると、興味を持ったらやってみようとする前向きな姿勢や度胸を感じます。それは元々の性格でしょうか?それとも、どこかのタイミングで身に付けたものでしょうか? 

佐藤:これは後天的だと思っています。なぜなら、私は中学生の時に通信簿に「もっと色んなことに興味を持つように」と書かれていました。元々、何事も率先してやるタイプではありませんでした。チャレンジ精神は、圧倒的な修羅場と成功体験を積んだ自衛隊時代に培われました。様々な場面で修羅場が成功に変わる楽しみを味わいましたからね。 

就職試験でアピール 自衛隊時代の2つの自慢 

古川:民間企業でサラリーマンや経営者となって、自衛隊の経験が活きていると感じる時はありますか? 

佐藤:私には就職試験の面接でアピールする自衛隊時代の自慢が2つあります。1つは幹部候補生学校の頃のカッター競技会です。飛幹と呼ばれる自分たち飛行幹部候補生は、防衛大出身のA幹にレースで負けてばかりでした。幹部候補生学校で過ごす期間が飛幹は半年なのに対して、A幹は1年と長いため経験値の差がありました。しかし、卒業直前の最後のレースで、飛幹の2チームがワンツーフィニッシュを決めたんです。その時、私は短艇係でチーム全体に訓練させる役割でした。「最後はA幹に勝とうと」と、チームを鼓舞して練習を重ね、勝利した瞬間の喜びは格別でしたね。 

古川:もう1つの自慢を教えてください。 

佐藤:2つ目も勝負事なんですが、八戸航空基地にいた時の水泳大会です。基地隊、飛行隊、整備隊の3チームで年に1回、水泳で順位を競う場がありました。私たち救難飛行隊は基地隊所属で、他には経理や食事係といった裏方の仕事をする自衛官が属していました。比較的運動が得意ではない自衛官が集まるのが基地隊なので、水泳大会は毎回、体力に長けた飛行隊と整備隊による優勝争いでした。私は基地隊の中で体育幹部の役職に就いていたので、隊員の体力強化を図る役目がありました。そこで、仲間たちに運動を促して、水泳大会で番狂わせを演じようと盛り上げました。その結果、2年連続で優勝し、1回目は奇跡と言われましたが、連覇できたのは自信になりました。 

民間企業への転職で必要な覚悟 経験者の話が貴重な判断材料 

古川:2つとも、先頭に立って集団を率いる役割を担われたのですね。チームの団結力やモチベーションを高めるために心掛けていたことはありますか? 

佐藤:カッター競技会も水泳大会も勝利できたのは、ゲーム感覚で楽しむ雰囲気をつくることができた部分が大きいと思います。いかにおもしろいゲームなのか、そのゲームに勝った時の気持ち良さを楽しそうに伝えました。それから、最初は無理だと感じていても、もしかしたら勝てるかもというムードが出てくると、みんな言葉や態度には出さなくてもスイッチが入るのが分かります。そのスイッチの入れ方が私は得意だったのかもしれません。 

古川:転職を考えている自衛隊出身者にメッセージがあれば、お願いします。 

佐藤:あえて厳しい言い方をすると、自衛隊に長く居た人がすぐに通用するほど民間企業は甘くありません。自分の課題や困難を乗り越えて挑戦したい気持ちがなければ、転職はしない方が良いと考えています。もし、本気で転職を考えているのであれば、自衛隊から民間企業に出た人に話を聞くのが良いと思います。私の経験談でよければ、喜んでお話するので連絡してください。最後に1つメッセージです。私も出演している「あいの里シーズン2」がNetflixで配信中なので、ぜひご覧ください。 

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この記事を書いた人

2024年7月にBallista入社。8月からスタートした自衛隊出身者のネクストキャリアをサポートする事業「Catapult(カタパルト)」を担当。防衛大学校卒業後、入社試験時の適性検査を販売する企業で営業職などを経験。人材獲得や入社後のミスマッチに課題のある会社の内定率向上や離職率低下に貢献した。

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