民間企業で活躍するには、特定の分野に興味を持つことプラスアルファが鍵になります。防衛大から陸上自衛隊に進み、民間企業の勤務を経て経営者となった吉本祐平さんは「興味だけではなく、アウトプットやアクションが大切」と説きます。吉本さんが民間で専門分野を深めるきっかけとなったのは、防衛大時代に参加したICC(国際士官候補生会議)でした。
【プロフィール】
吉本祐平:防衛大から陸上自衛隊に入隊。その後、防衛大時代に興味を持ったサイバーセキュリティ関連の企業に転職。ソフトウエア開発の企業を経て、2021年に「パレスリンク」を起業。宿泊者向けのチェックインサービス「TOMARO+(トマロプラス)」を提供している。
古川勇気:2024年7月にBallista入社。8月からスタートした「Catapult」を担当。防衛大卒業後、入社試験時の適性検査を販売する企業で営業職などを経験。人材獲得や入社後のミスマッチに課題のある会社の内定率向上や離職率低下に貢献した。
サイバーセキュリティに興味 きっかけはICC(国際士官候補生会議)への参加
古川:防衛大時代で記憶に残っていることはありますか?
吉本:私は海上自衛隊に所属していた8歳年上のいとこの影響を受けて、防衛大に進みました。4年間色々な出来事がありましたが、今振り返るとよみがえってくるのは部活の記憶ばかりですね。入学した当時の主将が自分と同じ広島出身の先輩だったこともあって、水泳部水球パートに入りました。私は中学、高校とプールのない学校出身だったので水泳の経験がほとんどなく、最初は大変でした。ただ、水球自体はおもしろくて、ハマっていきました。部活以外では、防衛大1年生の時にICCに参加した経験も貴重でしたね。
古川: ICC(国際士官候補生会議)では、どんな経験をしましたか?
吉本:私が参加した時のテーマはサイバーセキュリティでした。各国の士官が集まって英語で討論する他に、外部から招いた専門家から話を聞く機会がありました。この話が興味深く、これからの安全保障を考える上でサイバーセキュリティは不可欠だと実感しました。ICCがきっかけとなって防衛大では情報工学科に進みました。
防衛大時代に執筆した論文 転職活動で強みに
古川:吉本さんは防衛大卒業後に陸上自衛隊へ進み、その後に民間企業へ転職されています。なぜ、自衛隊を離れようと思ったのですか?
吉本:私は幹部候補生学校の途中で陸上自衛隊を離れる決断をしました。サイバーセキュリティの分野で、より早く知識やスキルを増やすには民間企業の方が適していると考えたためです。当時は経験が不足していて、正しい判断ではなかったかもしれません。自衛隊でも知識や経験を十分に重ねられますからね。
古川:民間企業に移ると決めて、どのように就職活動しましたか?
吉本:就職したい企業は決まっていました。先ほどお話したICCに役員が講師として招かれたり、文献で名前をよく見たりしていたサイバーセキュリティを専門とする企業でした。専門性を磨いて、その知識や経験を活かせる企業で働きたいという自分の条件と合っていたので、就職試験を受けました。エントリーシートや面接では、防衛大の4年間で学んだ国を守るマインドを持ち続けながら、私が興味を持っているサイバーセキュリティの分野で活躍したい思いを伝えました。防衛大の時に授業の課題とは別に個人的にまとめたサイバーセキュリティに関する論文を提出したことも評価してもらいました。その企業が自衛隊について、ある程度の認識や理解があったところも入社できた要因だと感じています。
ピンチで活きた 防衛大で培った忍耐力
古川:サイバーセキュリティの企業では、どんな業務を担当されていましたか?
吉本:主な業務の1つが、官公庁や大手企業を対象としたサイバーセキュリティに関する技術コンサルです。情報システム部門の担当者に対して、どのような脅威があるのか、サイバー攻撃を回避するために現状のシステムにどんな弱点があるのかを説明して一緒に対策を講じていました。その他にも、企業のウェブアプリケーションの脆弱性を診断するなど、業務は多岐に渡っていました。
古川:民間企業では一般の大学を卒業した人たちと働くことになります。防衛大卒業の吉本さんはギャップを感じませんでしたか?
吉本:入社当初は常識や考え方にギャップはありましたが、偶然にも高校の同級生も入社していたので民間企業に適応しやすかった背景があります。防衛大との違いを感じたのは忍耐力ですね。入社1年目に私が所属していたプロジェクトチームがクライアントに迷惑をかけてしまうミスをしました。先輩たちがクライアントにとの間で難しい状況に直面し、チームから離れていく中で 、私は逃げ出さずにピンチを切り抜ける方法を考えました。防衛大や自衛隊の時ほど大変だと感じませんでしたね。精神力が自然と鍛えられていたのだと思います。
民間企業2社に計6年半勤務 2021年に起業
古川:その後、サイバーセキュリティの企業からソフトウエアを開発する企業に転職されたんですね。
吉本:転職したのは、生体認証のソフトウエアを開発する企業でした。当時、オンラインの個人認証に興味を持っていました。業界全体がパスワードから変わっていく時期でした。転職したソフトウエアの企業はサイバーセキュリティの企業で働いていた頃につながりがあり、声をかけていただいたきました。ここでは主に新規事業のSE(システムエンジニア)を担当し、4年半ほど勤務しました。その後、2021年に今の会社「パレスリンク」を立ち上げました。
古川:起業した会社では、どのような事業を展開していますか?
吉本:事業の柱は、宿泊者向けのチェックインサービス「TOMARO+(トマロプラス)」です。スマートフォンとQRコードだけでチェックインできるシステムで、全国各地の宿泊施設に導入してもらっています。宿泊者はチェックインの時間や手間を省け、宿泊施設は業務の無人化や少人化できるメリットがあります。
会社員でも経営者でも武器 自衛隊のフォロワーシップ
古川:起業当初は苦労しましたか?
吉本:どんな業種にも共通しますが、最初は信用を得るのが大変です。銀行口座の開設から始まって借り入れや営業など、実績を上げるまでは苦労します。営業ではサービス内容を誇張せず、自分たちの会社がサポートできることを誠実に伝えるように心掛けて、少しずつ信頼関係を構築していきました。「TOMARO+」の開発には起業から1年かかっているので、それまでの期間は前職のソフトウエア開発会社から業務を受託して売上を立てていました。
古川:防衛大や自衛隊に属していた経験は、サラリーマンや経営者でも活きていると感じますか?
吉本:防衛大では競技会をはじめ、チームで団結する場やリーダーとしてチームを率いる機会があります。民間企業にいると、防衛大や自衛隊経験者のリーダーシップやフォロワーシップの素晴らしさを実感します。チームとして最大限の力を発揮するため、リーダーが何を考えているのか想像して動く習慣が自然と身に付きます。リーダーはチームを上手く動かす方法を常に考えます。これは、サラリーマンにも経営者にも大切な能力です。
採用したい人材は「興味がある分野で行動起こしている人」
古川:フォロワーシップは民間企業でも強みになりますよね。経営者目線で、自衛隊出身者に惹かれる点や採用したくなる要素はありますか?
吉本:弊社ではインターンも取っていますが、時間を守れなかったり、言葉遣いが身に付いていなかったりするケースが少なくありません。その点、防衛大や自衛隊出身者は社会人の基本が徹底されているので安心です。あとは話し方や表情が硬くなり過ぎないように意識すれば、民間企業に適応していけると思います。経営者目線では、自分の興味がある分野に関して行動を起こしている人と一緒に働きたいですね。興味があるだけではなく、アクションやアウトプットが大切です。民間では特に、主体的に動かないと物事が進まない面があるので、行動力が問われると考えています。
古川:転職活動中の人に向けて、メッセージがあればお願いします。
吉本:今のビジネスは不確実性が高くて、サイクルも早いと感じています。民間企業で活躍するには、自分の興味を突き詰めるしかないと思っています。誰かが言ったことに流されるのではなく、自分が人生をかけたいテーマを追求できる企業で積極的に行動していくことで仕事の充実感を得られるはずです。
最後に
吉本さんのキャリアは、興味を持った分野で行動を起こし続けることで切り拓かれてきました。防衛大での学び、サイバーセキュリティ企業での経験、そして起業までの道のりには、挑戦を続ける姿勢と、自衛隊で培った忍耐力やフォロワーシップが活かされています。
キャリアの選択肢は一つではありません。自衛隊での経験をどう活かすか、自分に合った道は何か、迷うことがあっても大丈夫です。Catapultでは、自衛隊出身者のキャリアに精通したパートナーが、あなたに合った選択肢を一緒に考えます。
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