「稼ぐことは悪ではない」 民間企業で知ったお客さまを感動させるやりがい

元陸自パイロットの宇野彰人さんは、不動産業や人材派遣業を経て、現在は航空関連のベンチャー企業「AirX」に勤務されています。自衛隊時代に抱いていた「稼ぐこと=悪」のイメージは、民間企業に飛び込むと一変しました。目の前のお客さんに価値や感動を提供する民間の仕事は、自衛隊とは違ったやりがいや充実感があるといいます。

目次

【プロフィール】

宇野彰人:陸上自衛隊少年工科学校卒業後、陸上自衛隊航空科に配属されて、ヘリコプターの整備を担当。その後、陸曹航空操縦課程(FEC)をクリアしてパイロットとして活躍。退官後は、不動産業や人材派遣業を経験し、現在は航空ベンチャー「AirX」で事業開発を担当。

古川勇気:2024年7月にBallista入社。8月からスタートした自衛隊出身者のネクストキャリアをサポートする事業「Catapult(カタパルト)」を担当。防衛大学校卒業後、入社試験時の適性検査を販売する企業で営業職などを経験。人材獲得や入社後のミスマッチに課題のある会社の内定率向上や離職率低下に貢献した。

自衛隊ではヘリの整備やパイロット 任務にやりがい

古川:まずは自衛隊に入った経緯を教えてください。

宇野:普通高校に1年通った後、16歳で少年工科学校に入校しました。少年工科学校の卒業生だった父親から勧められたのが、きっかけでした。集団生活は大変でしたが、体も心も鍛えられましたし、同期と苦楽をともにした時間は、人生の財産になっています。卒業する時は自然と涙が出てきました。卒業後は自衛隊に入り、希望していた航空科に配属されました。

古川:自衛隊では主にどのような仕事を担当されていましたか?

宇野:航空科で、UH-60の整備を担当しました。その後、年に1回受けられる試験に合格してパイロットになりました。国内の任務では、熊本地震や鬼怒川の氾濫といった被災地支援、海外では、東ティモールや南スーダンのPKOなど幅広く活動しました。人命に直接かかわる任務は重責ですが、やりがいも大きかったです。

「やらない後悔より行動」 時間と自由を求めて転職

古川:自衛隊で重要な任務を果たす中、なぜ民間企業に転職しようと考えたのでしょうか?

宇野:パイロットの免許を取って、自衛隊での任務も増えていました。ただ、仕事の性質上、何かあった時に初めて行動を起こす形でした。立場としても公務員なので、どうしても自由は制限されてしまいます。世の中には違った働き方や仕事もあると知ってから、民間企業への転職を意識するようになりました。

古川:民間企業への転職を考えるきっかけはなんでしたか?

宇野:自衛隊にいた頃は、独身で部隊の場所も千葉県木更津市にあったので、休日は東京に出かけていました。色々な人に会ったり、色々なものを見たりして、自分の生き方を漠然と考えていました。転職を決める上で最も大きな要因になったのは、自衛隊で仲良くしていた先輩の影響です。その先輩は「もっと視野を広げて、思い通りの人生を歩みたい」と自衛隊を辞めて起業しました。先輩が時間と自由を手に入れたように見えて、私も「やらない後悔より、行動してみよう」と転職を具体的にイメージするようになりました。

完全歩合制の不動産営業に転職 最初の壁は「稼ぐことへの抵抗感」

古川:自衛隊を離れる時、自分がやりたい仕事を具体的に描いていましたか?

宇野:明確に決まったものはありませんでした。実家が農業と不動産業を半々くらいでやっていたので、どちらかをやってみたいなという感じでしたね。退官後に、インターネットで調べたり、セミナーに参加したりして、自分に合う企業を探しました。その中で、新しい挑戦を始めるのであれば、フルコミッション(完全歩合制)の企業の方が、自衛隊を辞めた意味があると考え、フルコミッションの不動産営業職に就きました。

古川:フルコミッションの企業は自衛隊時代と大きな違いがあると思います。ギャップに苦労されませんでしたか?

宇野:自衛隊出身者が民間企業へ転職した時、最初に直面する壁が、「稼ぐことへの抵抗感」だと思います。自衛隊にいた頃は、「稼ぐことは悪」というイメージがあり、転職してから1年くらいは、お客さまからお金をいただくことに抵抗がありましたね。ただ、経験を重ねていくと、自分の仕事がお客さまの感動につながったり、価値を感じたりしていると気付きました。そこから、いただいたお金に見合うサービスを提供する考えへと変わっていきました。

不動産、人材派遣を経て航空ベンチャーへ やりがい重視して次のフェーズに

古川:民間企業で勤務していくうちに、適応されていったんですね。どのくらいの期間、不動産の営業をされていたのですか?

宇野:3年弱くらいです。不動産の中でも、主に投資用マンションの販売をしていました。順調に業績が伸びて、次は人材派遣の事業を始めることになりました。不動産営業のお客さまは会社員の方も多く、よく転職の悩みを聞いていたので、そこをケアする事業を立ち上げて、不動産業とのシナジー効果を図る狙いでした。メインは派遣業で、20代から30代の人材を中心に企業へ紹介していました。その後、現在勤務している「AirX」に転職しました。

古川:なぜ、次の転職先として航空ベンチャーのAirXを選んだのでしょうか?

宇野:不動産や人材派遣で売上を伸ばし、仕事への手応えを感じていました。同時に、稼ぐ楽しさだけが人生ではない、と次のフェーズに入っていました。AirXは、これから成長していく会社です。やりがいを重視して転職を決めました。パイロットをしていた自衛隊時代の知識や経験を活かせるところも大きかったです。

「空を通じて生活を豊かに」 非日常を日常にする使命

古川:AirXでは主にどのような仕事を担当していますか?

宇野:AirXでは、ヘリコプターをメインに、航空会社さまが保有している航空機とヘリコプターに乗りたいお客さまをマッチングさせるサービスを展開しています。ヘリコプターに乗って、夜景を楽しむデートやプロポーズの利用が多いです。私は新規事業を担当していて、ヘリコプターと宿泊施設を組み合わせた旅行商品など、新しいサービスや取り組みを進めています。

古川:どんなところに仕事の魅力を感じていますか?

宇野:会社として、非日常を日常にしていくミッションを持っています。自分が体験したことのないサービスやモノをつくっていくところに、夢やおもしろさがありますね。空には活用されていない空間があります。将来的には、今は1時間かかる距離を、10分、15分で移動できるようになるかもしれません。そうすれば、その分の時間を有効利用できます。空を通じて生活を豊かにできることが仕事の醍醐味です。自衛隊の時は、人を助けて感謝されるやりがいがありました。今の仕事は、目の前のお客さまの要望に応えて、感動させる魅力があります。

古川:今後の目標やビジョンを教えてください。

宇野:「空飛ぶクルマ」という言葉を耳にすることが増えましたし、ドローンが人を乗せて、電動で自由に空を飛べる時代も来ると思っています。技術革新を進めたり、今まで人類がたどり着いていない場所に行けるようになったりしたら良いなと将来を描いています。AirXは上場を目指しているので、ベンチャー企業から大企業になっていく一連の流れも体感したいです。

迷っているなら挑戦 民間企業でも武器になる自衛隊の経験

古川:転職を考えている自衛隊出身者にメッセージをお願いします。

宇野:自衛隊出身者はメンタルもフィジカルも鍛えられています。同じ年代で比較すると、民間企業で活躍できるベースがかなり高いです。誠実さ、体力、忍耐といった要素は武器になります。私は自衛隊を経験して良かったと感じています。現状に迷っているのであれば、思い切って転職して自分がやりたいことに挑戦する方が後悔はないと思います。

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この記事を書いた人

2024年7月にBallista入社。8月からスタートした自衛隊出身者のネクストキャリアをサポートする事業「Catapult(カタパルト)」を担当。防衛大学校卒業後、入社試験時の適性検査を販売する企業で営業職などを経験。人材獲得や入社後のミスマッチに課題のある会社の内定率向上や離職率低下に貢献した。

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